4回シリーズでお伝えしてきた、愛を深める4つのレッスン。「愛を深める」と聴くと、なんだかとっつきにくいですし、「そんなこと、学んでできることなの?」と敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。でもこれは仏教ではれっきとしたトレーニングで「四無量心:しむりょうしんん」(すべての命に向けられる4つの心)として、分かりやすく分類されて説かれてきた仏教の中心的な教え。その4つとは:
誰にも開かれた慈しみの心 loving-kindness
苦しみをいたわる思いやりの心 compassion
何にでも喜びを見出す心 sympathetic joy
いかなる時も平静な心 equanimity
ということで、最終回の今回は、4つ目の平静な心について考えてみませんか?
インスタグラムでも、動画でプラクティスを配信しています。
平静心とは
平静な心とは、愛とか思いやりとか喜びと言った、ほかの3つに比べると、あまりパッとしない、愛とどう結びつくのかと思うかもしれないけれど、1〜3のベースにあるのが、この4の平静な心と言えます。これがなければ、1〜3が成り立たない。すべての愛のベースには、平静な落ち着いた心が必要だというわけです。
平静な心は、自由でバランスが取れていて、広がりがあり、何かを排除したり、今ここをこねくり回したりせず、立ち上がってきているどんなこともそのまま受け止める心です。Tara Brachは自身のpodcastで、平静心を”heart that is ready for anything - どんなことも受け止める用意がある心” と言っています。
平静心を妨げるものとは
平静心って、時としてとても難しい。私たちは日々、ネガティブなニュースに影響される、やることが山積み、うまくいかない、疲れている、子どもや家族が言うことを聞いてくれない。そうすると、こうした方がいい、こうであらねばとコントロールしたくなり、待てない、不安、イライラなど色々な感情を経験しますよね。こんな人とは別れてやる、会社も辞めちゃおう、あぁーやっぱり私はだめだなど、罪悪感と非難と憎しみと自己嫌悪のトランス状態に入っていってしまいます。サバイバル脳が優先的になって、私たちの思いやり脳をハイジャックしてしまうようなもんです。負の感情に乗っ取られて、誰かに当たったり、ヤケ食いやヤケ酒などに走ってしまったり、ハートが閉じた状態での決断をしてしまいます。
でもそれに乗っ取られてしまうのではなく、またなかったふりや大丈夫なふりをするのでもなく、今ここに全身全霊を置いて受け止めるのが、平静心。それはまるで「波」と「海」の比喩に例えられます。海であれば、いくら波がたっても、全てのうちの一部と受け止められる。でも波しか見えていないと、船酔いしてしまったり、波に飲まれてしまったりするだけ。あくまでも全体の一つであると受け止められる知性を兼ね備えているのが、平静な心です。
何か不測な事態が起きた時にも、そこから逃げないようして、そのままを受け止める。波に飲まれるんじゃなくて、波を意識して、海である自分を思い出す。それをキープした時に立ち現れるのが、平静心です。
ただし平静心は、何もアクションを起こすことなく、何があっても黙って静かに黙認している、中立でいる、という心ではありません。平静心でいられることで、もっと深いところから必要な愛のある的確なアクションが起こせるようになるものなのです。
どう平静心を保つか
平静心を培うためには、何かコトが起こった時に、次の二つの質問をしてみましょう。
「今、何が起こってるの?」今ここで起こっていることに気づく。マインドフルネスの力を立ち上げる
「そのまま受け止められる?」事態について何もせず、受け止める。ハートフルネスの力を立ち上げる
先ほどの「波」と「海」の喩えを思い出すのもいいかもしれません。
あー今、大きな波が来ているなぁー。この波に乗ってるなぁー。結構、辛いなぁー。でもこれは私の全てではないし、俯瞰して海をイメージしてみよう、という風に。
具体的には、こんなステップを踏んで見てもいいでしょう。
感情に名前をつける(むかつく、悲しい、ねたましいなど)
体の感覚に意識を向ける(喉がカッとする、心臓がバクバクするなど)
呼吸をして、感じる(ゆっくり呼吸をして感じるスペースを与える。大丈夫、これも波の一つだよ、などと声がけして上げても良いですね。)
こんな風にして、平静心を保つプラクティスは、いつでも「今ここにプレゼンスを保ち」「全てを受け止める親切心や好奇心を携えること」で、誰にでも可能にできます。そしてそうすることで、すべての関係性に神聖さが取り戻せます。さらに空間が生まれ、これまでのレッスンで触れてきた何の境もない慈しみの心、思いやりの心、喜びの心も自然と立ち現れてくるのです。
愛を深める4つのレッスン、いかがだったでしょうか。ちょっとマニアック?で読者離れもあった気がしますが、私自身は時間をかけ、じっくりと「四無量心」について考えまとめ上げて、充実感と達成感を味わっています。
ただし頭で理解しただけでは意味がありません。何事も、自分のアイデンテティーになるぐらい、練習し、習慣化し、自然と愛が滲み出るぐらいになるようにしていきたいものです。
瞑想、立ち止まって意識を向けること、呼吸を味わい今に立ち返ること、ハートを開き続けること、今をそのまま受け止めること。そうすれば、自ずと愛が深まり、人間的に成長できます。私たち一人一人が必ず内側に、無限の愛を持っているのですから。地味だけれど、効果の高いプラクティスを重ね、4つの心を培い、ともに心を覚醒させて、これからも愛を深めていきましょう。
Love is the oil of our lives, without it we seem to dry up and become brittle, angry, rigid, unforgiving, inhuman. What we all need is more love. Karen Mulvaney
愛は、私たちの生活の油のようなものだ。それなくしては、私たちは乾き、もろく、怒り、硬直し、容赦なく非人間的になってしまう。私たち全員に必要なのは、より多くの愛なのだ。