ここ最近、「愛」をテーマに考えることが多く、このあまりにも深く時として捉えどころのないテーマを自分なりに探求していく事は、もしかして今世の使命だと感じ入ることも増えてきました。そんな時、敬愛して止まないアメリカの瞑想家/マインドフルネス伝道者のTara Brachのpodcastにて、「愛を深める4つのレッスン」についての発信があったので、ちょうど良い機会と思い、4回シリーズにまとめてお届けしたいと思います。
(手始めに)このレッスンついて、どんなテーマを扱っているのか
仏教に「四無量心(しむりょうしん)」と言う言葉があります。「無量」とは、生命のある全てのもののこと。人間だけでなく、もちろんどんな生物も含まれます。その全ての命に向けられる4つの心が、四無量心。「全ての命に対して、開かれた深い愛の4つのタイプの心を持つ」と言う、人間の目指すべく態度を表しています。その4つのタイプの心とは:
慈しみの心:相手に対して開かれた慈しみの心。Loving-Kindnessと英語では言われることが多いです。
思いやりの心:苦悩を抜いてあげたいと思う心。慈悲の心、憐れみ(あわれみ)の心ともえます。あわれみと言うと、「かわいそうに…」と同情するだけのような感じだけれど、ともに嘆くことで痛みを軽減しようとする優しい心。英語だと compassion。
喜ぶ心:ほかの人の喜びを、自分のことのように共に喜ぶ心。Sympathetic joy.
平静な心:動揺せずに落ち着いた心。英語で言うと、equanimity.
これをまとめて慈悲喜捨(じ・ひ・き・しゃ)、四梵住(しぼんじゅう)。英語だと four divine abodes、Bramavihara(ブラマビハーラ)と言ったりもします。
もう一度まとめると:
(1) あらゆる人に深い友愛の心を限りなく配ること (慈無量心)
(2) あらゆる人と苦しみをともにする同感の心を限りなく起すこと (悲無量心)
(3) あらゆる人の喜びをみてみずからも喜ぶ心を限りなく起すこと (喜無量心)
(4) いずれにもかたよらない平静な心を限りなく起すこと (捨無量心)
この全ての命に向けられる4つのタイプの心、「四無量心(しむりょうしん)」は、私たち一人一人の中にすでにあるものだけれど、それが日常生活の中で見えにくくなってしまっている、発揮されにくくなっている。だからこそ、その原因を特定して光を当て、もっと4つの心が発揮しやすくなるようにトレーニングしよう、そうすることで愛のセンターを生きられる、と仏教は説いているのです。昔の人は、抽象的で大切なことをまとめて伝えるのが、上手でしたよね。
詩人のルーミーも、こんな風に言っています。
“Your task is not to seek for love, but merely to seek and find all the barriers within yourself that you have built against it.”
― Rumi
あなたがすべきこと、それは愛を探し求めることではなく、愛に対して築いてしまったすべての壁を探し求めることだ
ー ジャラール・ウッディーン・ルーミー
と言うわけで、この4つの心を順番に紐解いていくことで、もっと愛の光を放てる人間に私たち一人一人がなっていこうと言う愛のレッスンとトレーニングが、今回の試みです。Taraのpodcastからインスピレーションを得ていますが、私の洞察も散りばめられていますので、ご了承のほど。
(まず第一回目のレッスン)慈しみの心とは
慈しみ(いつくしみ)の心とは、思いやりがあって気づかいができる心。優しく愛情深く、困っている人がいたら自然と手を差し伸べる、開かれていて余裕がある心です。親が子に注ぐような無償の愛、無条件の愛とも言えるでしょう。もしかしたらおじぃちゃんやおばぁちゃんが、無償に孫を「可愛い、可愛い」と言うような気持ちにも似ています。
人間は支え合って生きていく必要がある社会的生物で、生まれながらにして誰しもが「慈しみの心」を兼ね備えています。心の真ん中には、いつも愛があるのです。でもそれがいつしか埃に埋れてしまい隠れてしまう。愛の輝きが放たれなくなってしまう。おにぎりで一番真ん中のお目当ての梅干(やほかの具)がご飯やノリで隠れてしまっているように!
慈しみの心を隠してしまう悪しき習慣や日々の生活のパターンがあるとすれば、それは何だろう?それを理解することでその障壁を取り除き、もっと新しい習慣をインストールできるのではないか?と言うのもここ最近、「脳の可塑性(neuro plasticity)」と言う概念が主流になりつつあり、脳の神経系はトレーニング次第で変化する、と言う研究結果がたくさん出てきて話題を呼んでいます。”Make a State a Trait” と英語で言うように、何回もトレーニングを積んでいくと、State(状況に左右される一過性の状態)をTrait(条件に左右されない性格や特性)に変えていくことができる、と言うわけです。
慈しみの心が閉ざされてしまうパターン
どんな時に慈しみの心が発揮しにくくなってしまうでしょうか?自分ごととして考えてみると、、、次の4つのパターンが多いかなと思います。
スペース (Space) ……. 忙しくて余裕がない時は、心も体もこわばって、和らげません。つい時間に追われていると、何事も思い通りにさせようとしたり、自分勝手になったりしてしまうこと多いですよね。相手のことを考える余裕がないし、誰かを犠牲にしてでも自分のしたいように、押し通そうとしてしまう。何事もコントロールしようとすると、ハートは自動操縦モードになってしまって本領発揮しません。
執着 (Attachment) …….. こうでなくてはならない!絶対これが正しい!これをやらなくちゃ!と何かしらに執着している時は、心も閉じてしまいます。あの人はいいなぁーと言うのもこの部類に入るかもしれないですね。認められたい、愛されたいと言う渇望も心を狭めます。
今ここにない満足を求めること (seeking gratification ) …….この状況に満足できず、もっと何かあるはずだ、もっとお酒、もっと仕事、もっとお金。心ここにない状態。この人に愛されさえすれば、この仕事が終わりさえすれば幸せになれるのに!と言う時も、心の中のやわらかく広がりのある部分にアクセスできません。
安全 (safety) ……. 誰かに責められたと感じて自分の身を守らなくてはならなかったり、自分自身が受け入れられているか心配だったり、正直になれなくて距離を置いたり、人にどう見られているか心配だったりと、恐れや防衛が働く時。そう言う時は、開かれた気持ちにはなれず、傷つきたくないから、気持ちの扉を閉めてしまう傾向にあります。
他にもどんな時に、私たちが本来持っている慈しみの心が最大限、発揮されないと感じるでしょうか?Taraはpodcastの中で「私たちの心をブロックしているものは、なんだろう?」と批判せずに観察し特定することが、まずは大切だと呼びかけています。ルーミーの詩と同じですね。
慈しみの心を育てるポイント
先ほど書いたように、慈しみの心を育てることは可能です。それは心のトレーニングでもあり、脳の神経系を再構築することもであるのです。そのためにTaraはこんなポイントを挙げています。
今ここに充分に「ある」こと…. practice of full presence. これはマインドフルネスのプラクティスと同じですね。Attention is the truest form of all love. (意識を与えることが、愛の本質の形)と、誰かも言いました。今ここに、目の前の命とともに、ただただあること。そうするだけで、心に余裕が生まれ、自分の課題は少し脇に置いて、今ともにある命を大切にできる気がしませんか?これはもちろん自分自身に向ける全身全霊の注意も含まれます。
人の良いところに見を向けること ….. 私たちは「何がいけなのか、何がうまく行っていないのか」を知らず知らずのうちにスキャンしてしまう完璧主義の傾向にあります。そうではなくて、「何がうまくいっているのか」に目を向ける。これは人間に限らず、自然界のすべての命、そして日常生活で起こるすべての物事に対してもそうです。大事なのは、頭で「素晴らしいな、ありがたいな」と認識するのではなくて、感覚全体で味わうこと。15〜20秒ほどポーズしてうまく行っていること、感謝することを、身体の中に取り込むつもりで味わってみましょう。
愛を表現すること ….. 私たちは愛を感じていたとしても、なかなかそれを表現しません。恥ずかしかったり、そのための時間を取らなかったり。日本人は特にその傾向にあるでしょう。だからこそ愛を感じたら、それをちゃんと言葉にしてみる、体で表現してみる。意識的にそれをすることで、慈しみの心が自然に育っていくことにつながっていきます。これは私も特に意識してやっていることです。
ほかにもどんなことをしたら、私たちがすでに持っている慈しみの心をもっと育てていくことにつながっていくでしょうか?
慈しみの瞑想 (メッタ瞑想)
瞑想は平穏で開かれた心を育てるのに大きな成果をもたらしますが、その中でもメッタ瞑想 (loving-kindess meditation) は、特に愛と思いやりの気持ちを育む瞑想として、仏教において代表的な瞑想法です。
私が幸せでありますように
私の愛する人が幸せでありますように
私の苦手な人が幸せでありますように
生きとし生けるすべてものが幸せでありますように
と、対象を変えて思い浮かべながら、心の中で自分にあったマントラ(呪文)を繰り返して唱えると言うもの。とてもシンプルだけれど心に慈愛があふれるような効果があり、私も大好きな瞑想法です。
こちらのYoutubeビデオもご参考になさってみて下さい。
今回は、「愛を深める4つのレッスン:1 慈しみ」と言うことで、まとめてみました。こんな感じで2、3、4と続けてみます。普段はあまり考えないことかもしれないけれど、みなさんのすでに持っている愛の心を育てるお役に立てたら嬉しいです。コメントもぜひ!
わたしも母と共にした思い出のある、お気に入りの瞑想です。
わかりやすく、まとめてシェアしてくださって
ありがとうございます。
あたたかく柔らかなぬくもりに包まれるような感覚です。